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結婚式なんかの終わりには、やっぱり感動するイベントが似合う。夫妻は、2人とも片親だったので自分たちの親に手紙を読んで式は温かい涙で終わった。
それを観ながら思っていた。めぐみの事を考えなくてもいい時期なのかも知れない。
そんな雨降りの夕方。
会場となっていたおしゃれな食堂に、さっきの女の子たちが傘を譲り合っている。
どうやらタクシーの方向が合わないらしく、乗れない娘がいるようだ。
サトシは自分の傘を差し出して傘のない彼女にこう言った。
「僕の傘に雨宿りをしませんか?」
怪訝そうな彼女の後ろから、ダンプカーが水溜まりを跳ね飛ばしてくるのが見えた。
次の瞬間、サトシは傘を受け取りかねている彼女ごと我が身で庇っていた。
彼らは傘を差した彼女ごと、間一髪で水溜まりからの直撃を避けている。
ずぶ濡れのサトシを除いて。
雨は温かく虹色に輝いて見える。
天からの恵みの雫。
心は、晴れ晴れとしている。
そんな、素敵な雨の日だった。
―Fin―
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