『ある雨傘の詩』

第1章

「サトシお前、それ絶対刺されるぞ！」

「刺されるって何だよ、誰が刺すんだよトオルか？」

親友というより幼なじみの川崎通と、馬鹿話をしていたあの日。かつては、彼女を入れて3人組で遊んでいた。
元気が良過ぎて男の子より勇ましい。そのくせ虫を大変怖がるショートヘアーの彼女。

「バカだなぁ、それ絶対痴話喧嘩だぞ！」

トオルが言ったその言葉を、聡司はまさかと思いながら。でも疑念は拭い切れなかった。

雨降りには、嫌な思い出がある。かつてはこの幼なじみの中心にいた彼女を、雨が奪ったのだ。

あれは忘れもしない。

彼女と別れて帰宅途中で聞こえていたあの音が何なのか。

幸せに酔っていたから、思いもしなかった。

遠くに聞こえていたサイレンが、彼女を運んでいる救急車だとは思いもしなかった。