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4月も後半になると言うのに、天候不順で嫌になる。春の嵐と言う位だから当たり前なのかもしれないが。
ポカポカした陽気だと思って、傘も持たずにのほほんと歩いていた。
少し彼女の事を忘れるようになっていたのかもしれない。
次の瞬間、天から物凄い雷雨が襲うような気がしたのだ。
実際には土砂降りになりそうな雲行きになっている。
(困ったもんだなぁ)と、思う間にも雨は本降りになっている。どこかで雨宿りした方が良いかな。などと思って歩いていた。
こんな地方都市には良くある、シャッター街の軒先を避難場所にしている人々があちこちに見られる。
信号待ちをしているその時、横から黒い大きな雨傘が「あげる」という捨てセリフと共に押し付けられていた。
呆気に取られてる間に信号が変わっていた。その長い髪の女性が小走りで去って行く。
何かから逃げ出すように。
雨から逃げ出すように。
雨降りの記憶から逃げ出すように。
サトシは雨降りの記憶から逃げ出す事が出来なかった。
ただ黙ってその女性を見送る。
めぐみに雰囲気が似ていたが、そんなはずはないのだ。
あの雨がめぐみを……。
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