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「千花子さまはいやではないの?
あなたのような愛らしい器量の持ち主なら、もっともっと素敵な殿方に見初められてよ」
「そうそう、位の高いお家のご子息は、時にお顔立ちが残念なことがあって」
さらに今度は、禁句に近いことまで言い出す友人に、皆はギョッとしつつも、笑わずにはいられないと吹き出した。
「――わ、私は……十歳の時に、パーティの席で春海様を見掛けてから、もうずっとお慕い申し上げてるんです」
そう、あの方の為に、少しでも良妻になりたいと、様々なことをがんばって来た。
あの方の隣に立って恥ずかしくないようにと、自分も美しくありたいと努力してきた。
その努力が実っているかは、分からないけれど。
親同士が決めたとはいえ、春海様のような方の妻になれることに、不満なんてなにひとつない。
彼を想い、千花子は胸の前でギュッと拳を握りしめた。
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