第一章 許嫁

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「千花子さまはいやではないの? あなたのような愛らしい器量の持ち主なら、もっともっと素敵な殿方に見初められてよ」 「そうそう、位の高いお家のご子息は、時にお顔立ちが残念なことがあって」 さらに今度は、禁句に近いことまで言い出す友人に、皆はギョッとしつつも、笑わずにはいられないと吹き出した。 「――わ、私は……十歳の時に、パーティの席で春海様を見掛けてから、もうずっとお慕い申し上げてるんです」 そう、あの方の為に、少しでも良妻になりたいと、様々なことをがんばって来た。 あの方の隣に立って恥ずかしくないようにと、自分も美しくありたいと努力してきた。 その努力が実っているかは、分からないけれど。 親同士が決めたとはいえ、春海様のような方の妻になれることに、不満なんてなにひとつない。 彼を想い、千花子は胸の前でギュッと拳を握りしめた。
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