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だけど、春海様。
私は本当に、ずっとお慕いしていたんです。
まるで絵本に出て来る王子に恋をしたかのように。
幼いあの日、ピアノを奏でるあなたの姿に、
私はもうずっと魅入られてきた。
せめて私が真の華族の娘ならば、
あんな目で見られずに済んだのだろうか?
最初、桜の庭でお会いした時は、
あんなに素敵な笑顔を見せてくれたというのに。
――春海様。
千花子は自分の体を抱き締めるように身を縮ませて、声を殺して泣いていると、
「――千花子さま」
と圭子がノックと同時に、静かに扉を開けた。
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