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本城が「こっちに来てみな」とソファから立ち上がった。西側の窓を開け、バルコニーへ出た。あたしも仔猫を床に下ろし、後についていく。
「どうだい?」
本城が顎を振って、得意げに外の景色を見せた。
「わかります! 私も沈んでいく夕陽を見るのが大好きで――」
両手を胸の前で合わせる。
「見ろ。目の前が小学校のプールなんだよ! 水泳の授業になったらスクール水着姿の女児がわんさかとあそこに湧いてくるんだ。まさにオーシャンズビュー! こんな眺望、何千万だしたって惜しくない。ああ、授業が待ちどおしいな」
あたしは醒めた目で漫画家の横顔を見た。
そう、本城ハルヲは美少女を描くのを得意とする、ありていに言えばロリコン漫画家だった。
今春、マッドマガジン社から出した単行本『天使は眠らない』は、成年マーク付きにもかかわらず二十万部を刷った。前代未聞の出来事だ。
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