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「なんで、そんなに大人の女性――熟女が嫌いなんですか?」
「大人は汚いだろ。心がピュアじゃない。特に女は小狡い。偽りと打算ばかりだ」
「小悪魔ってことですか?」
「違う。なんでもいい意味にとろうとするな。けばい化粧、きつい香水、染めた髪、モテようとする打算…すべてだ」
やがて窓の外の風景が秋葉原の電気街に変わった。
信号で車が停まり、制服風の衣装で微笑むアイドルの看板に本城は目をやった。
「大の男がなんで十代のアイドルに熱中するかわかるか? アイドルたちの涙や言葉には偽りがない。大人の世界に染まっていない、あの年齢の少女たちにしかないピュアさ、が男を惹きつけるんだ」
本城の言葉の中にあたしは嘘を感じていた。
じゃあ、ピュアな熟女がいれば好きになるのか? この男が恐れているのは「老い」だ。日本の男たちは自分の「老い」と向き合えない。だから少女という若さに走るのだ。
あたしはぼんやりと看板を見上げた。少女たちの笑顔が真実なのか、偽りなのかはあたしにはわからない。もし偽りだったとしても、それも含めて「女」の一部なのだろう、きっと。
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