第5章 カリスマと呼ばれた漫画家(おとこ)

2/51
601人が本棚に入れています
本棚に追加
/406ページ
* 三人目の漫画家 その駅直結のタワーマンションは池袋にほど近い私鉄の駅の上にあった。 小学校のプールに隣接していない代わりに、傍には緑の多い静かな公園があり、都心とは思えない閑静な空間を生み出していた。 ホテルのロビーのようなエントランスホールで、あたしは1407号室を呼び出す。 はい、と若い男の声が応えた。 「あの、大隣出版の早瀬と申しますが」 『…先生はそちらとはお仕事をされていませんが』 戸惑った声が返ってくる。先生、ということは、恐らくアシスタントの一人だろう。 「あ、いえ…そちらで今アシをされている山元さんに用事がありまして…ご自宅に電話したんですけどつかまらなくて…あの、山元さん、携帯もお持ちにならないものですから」 玄関のロックが解除される音がした。
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!