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重い沈黙が落ちた。
この部屋はこんなに暗かったのか、と思うほど蛍光灯の明かりが薄暗く感じられる。
たまに終電間際の駅前で、深刻な顔で黙り込むカップルを見ることがあるけど、今の自分たちはあれと同じだ。
やがて、タカシが顔を上げた。
「…俺たち、少し、時間を置こうか」
頭の中が感覚をなくしたように白くなった。
タカシがヘルメットを持って立ち上がった。黙って玄関へ向かっていく。その背中に抱きつけばいいのに、自分がそれをできない女だと知っていた。
ドアが閉まり、窓の外からバイクのエンジン音が聞こえた。
部屋で独り、あたしは膝を抱えて座っていた。
エロ雑誌の海の中で、男と女がする別れ話はどうにも滑稽だった。今度彼氏を家に招くときは、もっと綺麗に部屋を掃除しておこうと思った。
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