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* シュラバ
夜十一時、編集部に残っている人間はまばらだった。四階のフロアはPCのハードディスクの回転音が聞こえるほど静かだった。
官能島に残っているのは、あたしと香坂の二人だけだった。郷上はとっくに帰社していた。
女性向け雑誌へのリニューアルは会社から認められた。
案の定、木島は大反対したらしいが、思わぬ味方が現れた。社長である。
成年マークを外し、女性をターゲットにし、より一般向けの方向へ、という郷上編集長の説明に食いついた。
財をなし、年老いた女性社長は、何が何でもエロで儲ける、という気持ちが弱まっている。幸い今は、ストリート系のファッション雑誌も好調だ。大隣出版のエロ色を薄めたいらしい。
その経営判断が正しいかはともかく、あたしにとっては渡りに船だった。
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