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最後まで抵抗したのは香坂だった。「もう原稿を発注している」「スケジュールが間に合わない」など、できない理由を百個はあげられて反対された。
ところが、ある日を境にぷつりと文句を口にしなくなった。恐らく木島専務あたりから、このリニューアルが失敗したらあたしに責任をとらせ、香坂を副編集長に昇進させるとでも吹き込まれたのだろう。
あたしは目の前に座っている部下をちらっと見た。
ま、大人しくしてくれるなら何だっていいんだけどさ。
視線に気づいた香坂が、じろっとこちらを睨んでくる。
「いつまで松岡を待つんです?」
リニューアル号の入稿は佳境にさしかかっていた。
香坂は担当作品をすべて入稿し、あとは色校を待つだけだった。折りの一部に、納品が遅れているあたしの担当作品が被っているため、とばっちりを受ける形で会社に居残っていた。
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