第9章 仕事の修羅場、恋のシュラバ…そして新雑誌誕生!

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「待てるまでよ」 今はデジタルデータで納品してくる漫画家が多い。編集者は漫画家の家に原稿を取りに行くのではなく、ひたすら編集部でデータが届くのを待つことになる。 「もう待てませんよ」 香坂の言葉にあたしは応えなかった。 それでも待つしかない。ひとの才能でメシを食っているのだ。できることと言えば、創作という暗く孤独な海をわたる漫画家に小さな灯りを振り、ひたすら港で帰りを待つことぐらいだ。 電話が鳴った。すばやく卓上の子機へ手を伸ばす。 松岡からだった。原稿が完成し、これから送るという。 「お疲れさま。メールがきたらすぐ落とすから、このまま電話つないでおいて」 ほどなくメールが届いた。記載されているURLからファイルサーバに上がっている原稿データを落とし、解凍する。 フォルダを開いたあたしのみぞおちがすうっと冷える。 何度もファイルを数え直す。結果は同じだった。
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