602人が本棚に入れています
本棚に追加
/406ページ
「松岡くん、これ、二十八ページあるけど」
発注は十八ページだったはずだ。
『…すいません。檀さんの原作を読んでたらイメージが膨らんじゃって…ページがちょっとオーバーしちゃったんです』
ちょっとどころではない。十ページもオーバーしている。どうりで時間がかかったはずだ。
あたしが何か言おうとする前に、松岡の声が聞こえてきた。
『これ、ぜんぶ載せてもらえませんか? 途中で切りたくないんです』
「ちょっと待って」
あたしは重い原稿データをPDFに変換し、原稿の内容を確認していった。
すばらしい仕上がりだった。官能小説家・檀一世の耽美的な世界を見事に表現している。着物の柄の細部にいたるまでリサーチして描く、松岡にしかできない仕事だ。
だが、もう台割は決まっている。今から変えるのは難しい。
最初のコメントを投稿しよう!