第1章 私はエロ漫画の編集者

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その後も松岡は文句をこぼし続けた。 曰く「編集者がいちど約束したことを反故にするのか(はい、します)」「引き継ぎがいい加減ではないか(それは同感)」「編集長が知らなかったで済む話なのか(済ませようとしているわけで)」。 神妙な顔で耳を傾けながら、あたしは内心うんざりしていた。 はあ、これ、いったいいつまで続くんだろ。 タイミング良く、松岡の注文したストロベリーパフェが届いた。 ウェイトレスが生クリームたっぷりのグラスをあたしの前に置こうとするので、手で松岡の側を指し示す。 漫画家は小さなスプーンでクリーム部分だけを器用にすくい、ちびちび舐めるように食べた。 冷房のきいた店内にもかかわらず、まるで熱々のラーメンでも食べているように額から汗が噴き出し、ロッカー風に肩まで伸ばした金髪がうなじに貼りついていた。 なんでこいつ、冷たいものを食べるのにハフハフいうのかしら?
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