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「キャラデザインにいったんOKを出したことは、前任の安藤からうかがっています」
テーブルの上に置かれた白い紙にあたしは目を落とした。
登場人物の絵がアングルを変えて描かれている。
特筆すべきはヒロインの胸だ。パンパンに膨らんだ水風船のように巨大な乳房は重力に逆らうように上向き、乳輪に至っては顔より大きい。
「だったらどうして、今になって美乳にしろだなんて言い出すんですか」
あたしは考えた。ここは正直に事情を話すしかない。
「あたしは今でも、このキャラは松岡くんの個性がよく出てると思う。でも、原作者の檀さんがもう少し胸を小さくして欲しいって…」
この男、絵は上手いのだが、いかんせんストーリーが作れない。そこで人気官能小説家・檀一世の作品をコミック化することにした。
ところが、キャラデザインを見た巨匠が「このオッパイはデカすぎて品がない」とクレームをつけてきたのだ。
「原作者がなんと言おうと、オッパイはエロ漫画家の魂です。譲れません」
口の端に生クリームをつけたまま、松岡が力説する。
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