第8章 なんで聞いてくんないの

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「終わった~梶~カラオケ行こうぜ!」 「あ~いいや」 「えぇ~なんでだよ~田嶋さん誘ってさっ」 案外、西澤が田嶋に入れ込んでいた。確かに可愛いし、サバサバしているのに女の子らしさもあって、西澤が今まで付き合ってきた子達とは違うから、いつも以上にアピール度が高い気がする。 俺も、あんな感じに思われてるんだろうか。 初めてのタイプに夢中になっているだけ。 そう思われていそう。 好きになっちゃいけない相手を好きになる事を楽しんでいる、とかさ。 そうなのかもしれない。 でも知らない。 ただ、好きなんだから、キスしたいし、触れたい。 それしかわかんないんだから。 拒絶されるかもしれないと不安に思いながらも、美術室へと向かった。 美術準備室は最上階にある、棟は違うけど音楽室同様にあまり使われない教室だから、テスト終了後の今なんて誰もいなかった。 廊下もキンと冷えている。 「は? 鍵?」 俺、中間終わったらここに来るって言ったよね? なのに鍵とか掛けないでよ。 今まで昼に俺が来るの知っていたから、掛かってなかった扉の鍵。 何、来んなってこと? 廊下で待ってても寒いし。準備室はダメでも美術室には入れたから、そっちで待つ事にした。 暖房をつけてとりあえず座ってスマホでもいじってみる。 準備室に人が来れば音でわかる。 今日はテストだけで皆帰ったし、明日も休みだから、いくらでも待ってられる。
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