第1章 ゲコ? カエル?

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人助けなんてするんじゃなかったかも。 三人くらいならどうにかなるかなって思ったんだけど、案外どうにもならなかったな。 こんな路地裏で本当にボコられるとは 三人ともずっと放送禁止用語連発で怒鳴ってるし、漫画かっつうの。 「グっ……ゲホッ!」 やばい。 マジで意識とか飛びそうなんだけど、とりあえず意識なくなったら、財布はなくなるでしょ? コレ。 帰りとかどうすんの? 財布は死守したいなぁ。 「おまわりさーんっ! こっちこっち!」 遠くからそう声が聞こえてきて、殴る蹴るの暴行を加えていた三人が、本当に漫画みたいに舌打ちをして逃げていくのがわかった。 サンドバックが相手を失って倒れるみたいに、俺はフラッと足元から崩れ落ちる。 「っと、ここ路地裏だから倒れこむと汚れるぞ。」 抱きとめてくれた人からは甘い良い匂いがする。 痛みで朦朧とする俺はその肩口に鼻を埋めようと無意識に擦り寄ると、思いっ切り髪を引っ張られた。 「イッ、イタイ! 痛いって!」 「そんな血だらけの顔を寄せてくるからだろ。そこまででかい声が出れば大丈夫だ。鼻も……折れてなさそうだし」 少しボーっとしていた意識が戻ってくる、と、同時に自分を抱きとめている人が見えてきた。ふわふわとした長めのショートヘア、髪を片方だけ耳に掛けて、その耳に赤いピアスをしている。男なのにキレイだった、女に見えるとかじゃない。 キレイな男の人。 モデル? 「カツアゲでもされてたのか?」 「違う。なんか女の子に絡んでたから、止めさせようとしただけ」 「そのわりには女なんていなかったぞ? 逃げられた? 可愛かったから助けた後でナンパとか?」 うん、と頷いた。 確かに可愛かったし、馬鹿みたいに格好付けて、その後を期待もしていたと思う。 サンドバック化という結果は別にして。 まぁ、これだけボコられてれば、女も逃げるわな、そう言いながら、その人は顔のキズを一つずつチェックしてくれていた。 俺よりも小さいその人は下から覗き込むように、顔を診てくれている。 至近距離で見たその眼がやたらとキレイに見えた。
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