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高校生って案外忙しいと思うんだ。
部活にバイト、テストだってある。
そして何人かはコンパなどの行事もあったりする。
今までは火曜と木曜はバイトに入れていたのに、美術部があるから、最近は今までよりも遅い時間に入らないといけなくなった。
でも、スマホ代やら、金は必要だから眠くても辞めるわけにいかないし。
「あ、これ新作じゃなくなってるじゃん」
高校生も可っていうバイトは少ない。
ようやく見つけた駅前のレンタルショップ、時給もいいし趣味の映画もタダで借りられる、けっこういいバイトだ。
「梶~悪い、レジ頼むわ」
「あ~い」
唯一の難点といえば、ここではアダルトは借りられない。
あと、十八歳未満だからアダルトエリアにも入れない。
今日一緒に入っている大学生が、やたらと目がチカチカする肌色前面なDVDを、両手に抱えてスッと十八禁マークの先に入っていくのを見送りながら、レジへと向かった。
別に入ってもよくないですか? よくないけど。
「いらっしゃいませ~」
レジ内のDVDを整理しながら、自動ドアが開いた気配を感じて、条件反射のように挨拶をすると、小さく知っている声が、ゲっ、と言ったのが聞こえた。
「!」
俺はあまりの偶然にドラマみたいにストップしてしまう。
「阿木野さん!」
「ちょ、お前何してんの?」
何ってバイトにしか見えないじゃん!
つうか、奇跡でしょ?
運命っぽいでしょ?
すごいテンションが上がって、言いたいはずのはしゃいだ言葉は頭の中でだけ踊っている。
「一応、バイト禁止のはずだけど? しかも今、何時?」
「あー……9時半? かな?」
「早く帰れよ。高校生」
辺りを見回しても誰もいない。
一人みたいだ。
なんかほっとした。
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