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「よし、どれもそんなにひどくないし、夜間の病院に行くほどではないか。気をつけて帰れよ」
一通り見終われば、その人はふっと体を離してしまい、支えをなくして自分で立とうと力を入れた途端、足に物凄い激痛が走った。
「あ、あの~……足が」
「はぁ?」
「で、その子は何?」
訊きたいのは俺の方なんだけど。
このおっさん、何?
足の痛みを訴えると、その人は面倒臭そうに小さなバーに案内してくれた。
初めて経験したバーには、ナヨナヨとオネエ言葉で話すなんか怪しいおっさんと、数人の男性客、多分、っていうかゲイバーだよね?
「誰も取って食べないから、ここに座れ」
その人は笑いながら、椅子をぽんぽんと叩いて座るよう促す。
「今日は用事があるからって早く帰ったかと思ったら、ヨレヨレの子拾って戻ってくるんだもの」
「仕方ないじゃん、歩けないっつうし」
その人はおっさんと話ながら、救急箱から色々用意してくれている。
会話から察するにこの人もゲイってこと?
でも、なんとなく納得がいく。
このおっさんや他の客は別として、キレイだったから。
「まずは足な。見せてみ」
言われるままにズボンを巻くって、痛みのある方の足を診せた。
基本、上半身を殴られたのにどうなればここがこんなになるのか、自分でも驚くくらいに腫れている。逃げようと暴れた時に挫いたのかな。
ビビっててわかんなかった。
その足に氷袋を乗せてテープで固定する。真冬だからそれだけでブルっと寒気がした。
「しばらく我慢な。冷やしてる間にこっち。」
キレイな長い指が器用に動いて、俺の顔の傷に消毒と何か塗り薬と絆創膏を貼っていく。
「すげぇ腫れてるな顔。次、上、捲くれ」
「え?」
「腹、蹴られてただろ?」
見られてたんだ。
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