第8章 なんで聞いてくんないの

4/5
3354人が本棚に入れています
本棚に追加
/650ページ
勉強疲れと暖房の暖かさで寝てしまっていた。 テスト終了と同時に急いでここに来たから昼を食べてない。 その空腹でうっすらと目が覚めた。 枕代わりにしていた腕も痺れてる。 起き上がろうとした時、静かに扉が開いた音がした。 そっと近づく足音に起きるタイミングが掴めない。 指が俺を起こさないように気を付けながら、髪を撫でている。 その指からほんの微かに甘い香りがした。 「……わけ……じゃん」 阿木野さん? 今、何て言ったの? 無意識だった。 気が付いたら、その指を掴んでいた。 「お前、起きてたのか?」 「今、何て言ったの?」 「……何も?」 指を掴む手に自然と力が入っていた。 「痛ぇ、離せ」 「いやだ。もう誤魔化されないって言ったじゃん」 好きでもない奴の髪なんて撫でないよね? 好きでもない奴に、延滞料金払おうと外で手が冷たくなるまで待ってたりしないよね? ねぇってば! 「もう限界」 「は? 何が? 俺はお前に延滞料を払いにっ!」 「いらない、そんなの」 好き……だよね? 俺の事……じゃなきゃ、今抱きしめてるこの腕とか払いのけるよね? 「逃げないで……本当に好きなんだ」
/650ページ

最初のコメントを投稿しよう!