第9章 どうかウーロン茶1500円じゃありませんよう に

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この辺だったと思うんだけど。 どうだったかな……阿木野さんのあとをついて歩いていただけだから、あんまり覚えていない。 少し後ろを歩いていたから、ずっとあの甘い香りがしてて心地良かったっけ。 まさかその人を自分が好きになるとは……あ ぁ、でもなんとなく予感はあった気もする。 年上の男なのはわかってたけど、なんか目が追っていたから。 それこそ、その時点では興味ってくらいだったとは思うけど、それでも気になっていた。 一目惚れ、とか? 多分、高校生がウロウロしていい所じゃない。 背が高いからそんなには子供には見えないと思うけど、キョロキョロしないように気を付けながら、阿木野さんが連れて行ってくれたバーを探した。 ゲイバーなんてよくわかんないし、変な問題になると困るから他の店には行けない。 あそこのオッサンなら俺が高校生ってすでに知っている。 「あ……」 曲がり道があって、そこへ目を向けると見覚えのある看板、そのゲイバー自体の看板は小さすぎて気が付かないけど、その斜め前にある看板がやたらと大きくて、怪しい紫色だったから覚えていた。 見覚えのあるドアだ。 多分もう夕方だから営業してるよね?  そっとドアを開けると、聞き覚えのあるオッサンのネコ撫で声でいらっしゃいと言われた。 よかった。 それに中の様子も見覚えがあった。 「あらっ? あの時の高」 「しーっ!」 高校生って言いそうになるオッサンに駆け寄って、急いで言葉を中断させる。 あの時は阿木野さんにばかり目が向いていたから、そんなに思わなかったけど本当に普通のオッサンだ。 「何よぉ阿木ちゃんは?」 「知らない」 「保護者いないのにこんなトコに来ちゃダメでしょぉ」 「だから、しーっ!」 保護者じゃないっつうの! オッサンが文句を可愛らしく言ってはいるけど、普通のオッサンであることに変わりはない。 未成年だからさすがに酒は頼まないけど、酒に見えるようにウーロン茶を頼んだ。 「暇つぶしするんなら場所間違ってるわよ。早く帰んなさい。最近、阿木ちゃんも来ないし……あんたまさか! 阿木ちゃんに会いたくて?」 そりゃ先生って忙しいって言ってたし、昼もなんかパソコンでやってるし。 ここに酒を飲みに来る暇はないんでしょ。
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