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ウーロン茶を出し渋るオッサンが、またあの冗談で千五百円と言いかけるのを、はいはいとなだめて席を移った。ここじゃ、オッサンがうるさくて思ったように動けないし、絶対に余計な事を話すに決まっている。
今日は高校生じゃなくて、せめて大学生の想定なんだから。
ナンパの仕方なんて男女でそんなに違いはないでしょ。
阿木野さんが俺にとっての初めての男になりたくないんなら、初めてじゃなきゃいいんだ。
半ばヤケクソだけど、どうせ話なんて聞いてくれない。
なら、本気だって事を知ってもらうしかない。
どんなに馬鹿げた方法であっても。
煙草、でも吸えたらよかったかな。
ひとりでテーブルでウーロン茶なんて飲んで、すっげぇ暇なんですけど。
そこへオッサンが不服そうにしながら、ポッキーを運んでくれた。
「え? なんでポッキー?」
「子供はおやつ食べてなさい。まったくここ幼稚園じゃないんだから。それ食べ終わったら帰りなさいよ」
「……」
あえて知らないフリ。
まだブツブツ言っていたオッサンは他の客に呼ばれて、そのおやつはサービスしてあげるから、とだけ言うと仕事に戻った。
ポッキー食べに来ただけ?
でもなぁ、さすがに俺も一応選びたいわけで、あと一回でやり方のコツを教えてくれそうな、ヤルのが上手い人でないと困るし。
ぽりぽりとポッキーを食べながら、本当に暇つぶしみたいになっていた時だった。
新しく客が入ってきた。
中性的、とも言える顔で背も小さめ、少し切れ長の目が美人な男って感じで、黒い髪がさらさらしていた。
絶対に上手そう! そんな感じ。
オッサンと何か一言二言話している最中も、いちいち仕草を色っぽくしている。
あの人で決定、と思ったら、向こうも俺を見つけた。
こっちを見てにっこりと笑っている。
オッサンが何かその人に言っているけど、そんなのはシカトで歩いてきた。
「ひとり?」
案外高い声、女とは違うけど、妙に色っぽい声だ。
「うん」
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