第9章 どうかウーロン茶1500円じゃありませんよう に

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たぶん俺を年下だと思っているだろうし、こういう積極的な相手って、あんまり押さない方がいいんだよね。 だからわざと“うん”なんて子供っぽく答えた。 「僕も一人なんだぁ、一緒に飲もうよ」 「いいよ、どーぞ」 「……ありがと」 けっこうマジで色っぽい。 好きになるとかじゃ全然ないけど、当たりを引いた感じ。 「ねね、いくつ?」 「俺? 教えない」 ここはゲイバーなわけで、なのでここにいる客のほとんどがゲイなわけで。 初対面の男に対して同じ男がこんなに積極的にアピールしてくるっていうのが、なんか不思議だった。  ずっと肩が触れている。 もし、これが阿木野さんの肩なら、電気が走って感電しているみたいな感覚になるんだろうな。 しかもこの至近距離だから甘い香りもずっとしていて、だから、余計に実感する。 俺は男が好きなんじゃなくて、ただ阿木野さんが好きなんだって。 「格好いいねぇ……すごいタイプの顔」 「ありがと」 「キス、とかしたくなってきた」 「マジで?」 うっとりと瞳を蕩けさせて、口元を見つめている。 こういうのは女の子となんら変わらない。 これがコンパなら、はい。 お持ち帰り決定。 そうと決まれば早くここを出たい。 だって、俺、高校生ですから。 ここでこの人にそんな酒をがぶ飲みされても、バイト代とかなくなるから。 つうか、男同士だとちょうどで割り勘?  男役の方が払うの? 割り勘だったらいいけどなぁ。 「ね、出よっか?」 ほら。耳元でそう囁けば、嬉しそうに腕に絡みつきながら早く早くと急かしている。 「俺、払ってくるよ」 とりあえずここは頑張ることにした。
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