第9章 どうかウーロン茶1500円じゃありませんよう に

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でもマジでウーロン茶とあの人の酒代で全部パァにならないよね。 心配しながらオッサンのところに行くと、怒った顔でいらないと言われた。 「え? なんで?」 「全く! あんたみたいな子供から金取れないわよ。たいして飲み食いしてないし……」 「マジで? 超助かる!」 「その代わり早く帰りなさい」 そこはシカト。 とりあえず深々と頭を下げて出ようとすると、オッサンに呼び止められる。 何? と言ってもなんかごにょごにょと当たり障りのない話をするばかりで、意味がわからない。 「んじゃ、待ってるから行くよ?」 「あ! ちょっ!」 まだ引きとめようとするオッサンを残して店を出た。 外では寒そうに体を縮めて、さっきの人が立っている。 「遅~い!」 「ごめんごめん」 「ね、どこ行く?」 並んで立ってみると、思っていた以上に華奢だった。 でも女じゃないから腕を絡められても、ぺったんこの胸があるだけ、さしてテンションは上がらず。 「ん~どこがいいかなぁ~」 多分、ラブホを探しているんだろうな。 これが阿木野さんだったら……阿木野さんが俺の腕に抱きついていたら、もうよくわかんなくなって倒れそう。 「どこでもいいよ」 ヤレればね。 そう思っていると、腕はいつの間にか首に巻きついていた。 「ね、その前に味見してもいい?」 いいよ……答えようとした瞬間、その人は小さな声を上げて、目の前からいなくなっていた。 あれ? 驚いて前を見上げると、かなり怒った顔の阿木野さんがいる。 「お前、何してんだよっ!」 「……」 肩で息をしてコートは着ているけど、マフラーはしていない。 首が外に出ていて寒そうだった。 「ちょっと何? あんた!」 さっきまで色っぽい感じで首に腕を絡めていたその人はかなり怒っている。 横から割り込まれたんだから、そりゃそうだろう。 けど、阿木野さんは無言で睨むだけ。 「これ、ウチんとこのなんで」 一言そう呟くと、俺の腕を掴んでさっさとその場を立ち去ってしまった。 「おい、梶! お前馬鹿だろ! マジで怒ってるんだからな!」 ずんずんと引っ張って行く背中を眺めながら、あ……ちゃんと苗字で呼んだ……なんて考えていた。
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