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初めて通る道。
家に帰るのと正反対。
でもそれだけじゃなく、世界が違って見えた。
暗い夜の道を前でブツブツ文句を言いながら歩く、その自分の好きな人の家に向かっている。
阿木野さんのエリアの中でも、一番阿木野さんに近いトコに向かっている。
「ったく! まだ仕事残ってたのに、晃さんからビビるようなメールが来るからマフラーだって忘れて置いてきたっつうの!」
「あきら……さん……?」
怒りながら教えてくれた、あのゲイバーのマスター、オッサンが阿木野さんにメールで俺が一人で来ていることを教えてくれていた。
“大変! あの高校生がタチもネコも処かまわず声掛けて、どっか行っちゃうわ!”
よく事情はわからないまでも、あのオッサンの機転で今、あの色っぽい人ではなく、阿木野さんと歩けている。
オッサンではなく晃さんって呼ぶことにしよう。
「マフラー貸すよ」
「遅ぇよっ!」
奪うように俺のマフラーを取り上げて自分の首に巻きつけた。
寒いと言いながら、顔の半分までをそのマフラーに埋めながら、こっちを睨んでいる。
「おいっ! あとでこのマフラーの匂いとか嗅ぐなよ!」
「しないよーそんなこと……」
たぶんね。
駅から十五分くらい歩いたところにあるマンション、そこに案内された。
「お邪魔しま~す」
「邪魔だって分かってるなら帰れよ」
嫌です。
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