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グレイ達が歩き始めて5時間が経過した。幸運なことにモンスターや兵士に遭遇することは無かった。だが逆に、そのことがグレイとオルドに一抹の不安を抱かせた。
エリックには実戦経験が無いという事、そして戦闘での動きが全く分からないという事だ。
道中は気の利いた行動を取ってくれているが、実戦となれば話は別だ。
殺意を持って向けられる刃。人として見られることの無い眼差し。いざ死と隣り合わせの場所に立っていると理解した時、人は足が竦む。
仮にエリックが臆さなかったとしても、エリックの装備は一人ではトロールの攻撃を防げるかも怪しい。戦闘になれば三人の連携は必須だ。
足手まとい。
それだけが気がかりだった。
グレイ「なぁエリック。お前戦闘経験が無いって話だったが、いざ戦闘になったら何をするかは分かってんのか?」
エリック「はい。後方支援ですよね?具体的には回復魔法と身体強化魔法でサポートするつもりですけど。」
グレイ「大丈夫そうだな。まぁ俺とオルドの事は気にしなくていい。自分の事を最優先に行動しろ。何なら一人で逃げるのでもいい。死なれるよりかはよっぽどいい。」
エリック「そんな事できませんよ。それに逃げるたって迷宮ではぐれたらそれこそ死んじゃうじゃないですか。」
オルド「迷宮ではぐれるより死にそうな状況になったらって事だよ。迷宮ではぐれて死ぬっても、道も分からないような状況の話だ。一層なら地図もあるし民家もそこそこある。最悪でも三日ありゃ人には出会えるだろ。友好的な態度を取ってもらえるかは別だがな。」
グレイ「まぁ俺らは一層に居るようなモンスター相手にやられるような事は無ぇが、お前を守りながらっていうのはちょっとキツイ。まぁ俺らも気を付けるが、自分の身は自分で守れって事だ。」
グレイの言葉にエリックは眉間に皺を寄せる。
エリック「あんまり舐めないで下さいよ。僕だって一応は訓練も終えた立派な軍人なんですよ。そりゃ初めての迷宮探索ですけど、自分の身くらい余裕で守れますよ!」
エリックは自信満々に胸を張る。
グレイ「へぇ、なら期待してるぜ。そろそろ休憩でもするか。いつも以上に警戒して疲れるぜ。」
グレイは手ごろな石に腰かけた。
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