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話は一月程前まで遡る。
???「なぁ、聞いてくれよ。部隊長だぜ?部隊長。団長もやっと俺の有能さに気付いてくれたよ。」
白銀の髪に赤い目。背中に巨大な剣を背負った男が、鼻を高くし自慢する。
彼の名はグレイ・ジーク。今回の塔の調査部隊の隊長だ。
???「ハイハイ、聞いてるよ。たった二人の部隊だろ?笑えねぇよ。何だってテメェの下なんだよ。馬鹿が頭張るとロクな事にならねぇってのに。」
全身を鴉の羽根で覆った様な服の青年がボヤく。顔は嘴を象った様な面を着けており、口元以外は隠されている。腰には二本の短剣。二本の鉈。二本の刀が下げられており、異様な空気を放っている。
彼の名はオルド・クロウ。
グレイの指揮する部隊の唯一の兵士だ。
グレイ「おいおい、たかが第1層3階の調査だぜ?日が傾く前には帰って来られるんだ。何を心配する必要があるってんだよ?」
グレイはテーブルに置かれた酒を勢いよく胃に流し込む。
オルド「だからだよ。そんな低層の調査自体異常だろ。んなとこ市民でもホイホイ入れるぐらいだ。いても雑魚か駐屯してる兵士ぐらいさ。だいたい指令書の内容も雑過ぎんだよ。何だよ1層3階の南側を探索せよって。何を探しゃいいんだ?鉱石か?食物か?それとも美人が落としたハンカチか?」
オルドは唯一見えている口の部分をも不快の感情で染める。
仮面の下では般若の様な顔をしていてもおかしくないなとグレイは思う。
グレイ「まぁそんな怒んなよ。確かにあの爺さんは女好きだが、公私はキチンと分けてるぜ?多分獣の遠吠えかなんかで、駐屯兵がビビって依頼したんだろ。どうせこれから冬に入るし、手練れ二人連れていきゃ駐屯兵も安心できるし、余計に兵を動かさなくても済む。そんなとこだろ。実際に依頼人が伏せられてるし、軍関連の奴が依頼人で間違い無いだろ。」
グレイは指令書をもう一度開け、確認する。
オルド「・・・だが油断は出来ねぇ。明日は万全の準備で出るぞ。俺はまだ死ねねぇからな。」
オルドはそう言うと、残っていた酒を呑み、立ち上がる。
グレイ「俺もまだ死ねねぇよ。」
グレイも立ち上がり、酒場を後にした。
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