第1章 灰狼と赤烏 1

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グレイが首狩りを掴むと、その重みが一気に両足に掛かる。 床3センチに足がめり込み、その場に留まっているだけでも更に沈んでいく。 グレイ「相変わらずバカみたいな重さだな。竜の呪いってのは厄介だなホント。」 首狩りは存在していた竜の約三分の二を狩った武器だ。その武器には素材にされた竜、そして今まで殺された竜の、人間に対する途轍もない怨念が籠っており、人の血が濃いほど体に掛かる負担は大きくなる。 竜狩りザクスウェルはその呪いによって片足と片腕を失い、最後にはこの剣に潰されて死んだとされている。 また、この剣が見つかった場所に血痕だけが残っていたことから、この剣は人の肉を食うという伝承も残っている。 グレイ「武器はコイツと、あとは爆薬と食糧があれば何とかなるか。」 グレイは武器庫に保管してある爆薬の入った入れ物を五個ほど鞄の中に入れ、食堂に向かった。 食堂には朝早いという事もあり、空いていた。 グレイは朝食の準備を終え、暇そうにしている食堂の給仕に声を掛けた。 グレイ「よぉ、これから任務何だが食糧をくれないか?二日分だ。」 給仕「グレイか。オルドから話は聞いてるぜ。眠気も吹っ飛ぶようなスパイシーな肉と最近発見された米っていう食い物だ。あとコイツは俺からの差し入れだ。」 給仕は肉と握り飯が入った包みと、1本の酒瓶を渡した。 グレイ「いいのか?これ結構いいやつだろ?」 給仕「気にすんな。この前の薬草の礼だ。あれのおかげで娘の病気がかなり良くなったんだ。また頼むこともあるだろうから、その時はよろしく頼まぁ。」 グレイ「そうか、ならありがたく頂いておくぜ。」 グレイは包みと酒を鞄に詰め、迷宮入口に向かった。 迷宮、塔、人々は様々な呼び方でこの塔の事を呼んでいるが、軍での正式名称は迷宮だ。 内部は迷宮の様に入り組んでおり、軍の地図に載っているものも、その階層のごく一部といった具合だ。 入口は東西南北の四か所があり、入口周辺は大都市、四隅は農家など人々の食糧源の生産地となっている。 また、迷宮をぐるりと囲むように鉄道が設けられており、人々の生活を支えている。 オルド「随分と遅かったな。今日の迷宮は一層二階までは快晴。一層五階までは大雨だとさ。やっぱりお前は雨男だな。」 オルドは迷宮入口の壁にもたれかかり愚痴る。
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