第1章

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急速に手足に感覚が戻ってくる。とはいえ軽い貧血状態と変わらない彼の足元がふらつくのを見て璃亜が腕を伸ばす。 「っと、さんきゅ。やっぱ慣れねえもんだな、結構な回数こなしてきたと思うんだけど」 しっかりと自分の脚で立てるのを確認し、相一の手を離す。 「これはまたいいもの見せて貰ったわぁ。あんなの見せられたらお姉さんの方も昂っちゃうじゃない」 両腕で我が身を抱きながら身をくねらせる水張の胸元が大きく跳ねる。その光景を怨念でも籠っていそうな表情で氷柱がにらみつける。 「確かに今のは扇情的で素晴らしいパフォーマンスだったけどぉ? 本題はそこじゃない筈よねぇ、大事なのはそれで牛鬼を超える力を発揮できるかどうかで――――」 瞬間、その場の空気が一変した。璃亜を中心に空間そのものが軋む様な、圧倒的な重圧が圧し掛かる。 「――――――な、これは!?」 水張の躰が大きく身震いする。身体の芯から湧き上がるたった一つの感情、恐怖。内臓から指先まで全身を支配していく恐怖を気力で押さえつけようしていた所でふと辺りを包むプレッシャーが霧散した。 「ひとまず、これで納得していただけたでしょうか?」
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