第1章

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 本来静寂に包まれ波の音しか響かないはずの日没後の海水浴場、そこに地響きを伴う轟音が連続して鳴り渡る。 山の様な巨躯を支える八本の脚が蠢き、己の全長の十分の一程度しか無い標的目がけて振り下ろされる度、内臓が浮き上がる様な感覚を覚えるほど周囲の浜辺に振動が走る。 「ふん、威勢の割には逃げ回るばかりの様だが? その程度で儂に楯突いた事を後悔――――する暇もなく潰してやろう」 「知性にも品性にも欠ける気遣い感謝します。まあその無駄に巨大な体躯で蜘蛛並みの俊敏さを発揮できている点は評価して差し上げましょう」 璃亜の言葉にあからさまに顔を歪めた牛鬼が暴走したトラックの様な勢いで突っ込んでくる。先端に銛の様な返しのついた黒い脚、長く重厚なソレを器用に操り四方向から璃亜の逃げ場を潰すように襲い掛かる。その瞬間、都合四回の地響きが重なり合って一つの爆発音と化した。
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