第1章

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「手ごたえ、ありだのう」 硬く分厚い甲殻で覆われた脚に触覚が存在するのかは定かではないが、牛鬼はの脚先でようやく獲物を捕らえた事を確信する。 爆心地の様にえぐれた地面を中心に細かい砂粒が舞い上がり吸血鬼の無事が確認できない状態で、距離をとってその光景を眺めていた相一のスマホがおよそその場に似つかわし無い着信音を鳴らし始めた。 「俺です」 『待たせて済まない、頼まれていた周囲の人間の避難が完了した。半径2km以内には人っ子一人居ない筈だ』 「ありがとうございます乃里子さん! 相変わらず仕事が速いですね」 『よせ、こんな事でしか協力できなくて申し訳なく思っているんだ。本来ならばお前たちの身に危険が降りかからない様に全力を尽くすのが我々警察という組織の役目の筈なんだが、毎度こういった事にはお前たちに任せきりになってしまって――――』 「何いってんですか、乃里子さんらしくもない。俺たちが近所の人間に今からここで妖怪同士が喧嘩するから避難しろって言っても誰も聞いちゃくれませんよ。警察(そっち)が出来ない事は天柳探偵事務所(おれたち)が、天柳探偵事務所(おれたち)に出来ない事は警察(そっち)に任す、これもギブアンドテイクってやつですよ」
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