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『そう言ってもらえると多少は気が休まる』
適当な所で警視総監との通話を終えた相一は自分の口元に両手を添え大声を張り上げる。
「準備完了だ! こっからは思いっきりやっていいぞ!!」
「――――――――ぬ?」
何事かを喚きだした人間に注意を向けた瞬間、十㌧では収まらないであろう牛鬼の巨体が不意に地面を離れた。
「さすが乃里子さんですね。では、こちらもこちらの役割を果たすとしましょうか」
砂煙が晴れ、クレーターの様になった浜辺の中心には何食わぬ顔で吸血鬼が立っていた。ただ突っ立っているだけではない、その両腕を大きく広げ丸太よりも太い四本の蜘蛛脚を抱きしめる様に抱えていた。
「この、――――――小娘が! その躰のどこにそんな力が!?」
半数の脚を纏めて掴まれ持ち上げられた牛鬼、その残り半数の脚が空を掻く様にもがいて暴れる。
「そんなに暴れられてはうっかり落としてしまうかもしれませんよ。――――――こんな風にッ!!」
僅かに腰を落とし、蜘蛛の脚を抱える両腕に万力の様な力を籠める。そのまま身を翻すと一本背負いの要領で牛鬼の巨体を地面に叩きつけた。凄まじい衝撃と轟音が一瞬にして無人のビーチを駆け抜ける。
「ご、ッアァアアアアアアアアァッ!?」
半数の脚の自由を奪われ、まともに受け身も取れない状態で背中から地面に叩きつけられた怪物の口から苦悶に歪んだうめき声が響く。
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