第1章

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山の様な巨躯を持つ怪物がひっくり返る光景を遠巻きに眺めていた雪女が呆れとも感心ともとれる表情でぽつりと呟く。 「いやー今更なんだけど、どっからあんな力出してんのよ。いくら吸血鬼が人間離れした腕力を発揮できるって言ってもよ?」 「ああ、それなら簡単な話だぞ」 「?」 「そもそも妖怪ってのは皆、自分の妖気を身体能力に変換する事が出来る様になってる。勿論それは身体能力に限った話じゃ無い、例えばお前の場合なら自分の妖気を冷気に変えて放ったり氷を操るのに使うだろ? で、その様々な使い方が出来る妖気だけど種族毎に、或いはその個人毎ごとにも大なり小なり得手不得手がある訳だ」 「あー。つまりあたしだったら、直接殴り合うよりも氷を操って相手をぶった切る方が何となくしっくりくる、みたいな?」 「まあ簡単に言えばそんな所だ。そこでさっき言った妖気の変換の話だけどこれにもやっぱり得手不得手が存在するんだ。分かりやすい様数字で例えるけど、今お前の秘めている妖気を100とする。それを全部冷気を操る能力に回したとしよう。その場合は何の問題も無く、ほぼ100%の割合で冷気を放ち氷を生み出す操る能力として発揮できるだろう。問題はその妖気100を全部身体能力に回した場合だ、これは俺の予想だから実際はどうか知らねえけど多分その時は40%程度の効果しか期待できないと思う。これはお前の実力がどうのこうのって話じゃなく雪女っていう種族の得手不得手の問題だ」 相一のすらすらとした説明を頭の中で噛み砕いていく氷柱。すこし離れた場所では人間を超えた力を振るう吸血鬼と異形の怪物が激しい激突を繰り返している。爆発音にも近い衝撃をBGMに相一の解説はは続く。    
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