第1章

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  「だから妖気が生命線になる妖怪にとってこの……変換効率、とでも言うかな。これが自分にとって一番最適な使い方をしていくのが最良の戦い方、になる訳ですはい。んで、璃亜の話に戻るけどあいつの場合この変換効率ってのが極端でな。お前みたいに妖気を冷気に変換させたり、千里みたいに透視能力を使える訳じゃなねえんだけど、その分妖気の身体能力に対する変換率が桁違いに高いんだ。それこそ100の妖気で200%でも300%でも出せるくらいにな」 「成程ねー、それに加えて妖気の総量自体も底が見えない訳だもんね。…………あの馬鹿力の秘密がようやく分かったわ。ていうかあんたは何でそんなに妖怪の事情に詳しいのよ? さっきの話だって言葉で聞いて納得はしたけど感覚的には多分以前から理解していたんだと思う、じゃなきゃここに来るまでにどっかで負けて野垂れてると思うし」 「そりゃぁまああれだ、こんな仕事だし基本的な事はとある人から一通り教わってるっていうか強制的に仕込まれたっていうか…………」 何故か渋い表情で言葉を濁す相一の反応に首を傾げながら目の前で繰り広げられる妖怪同士の戦いに視線を戻す氷柱。そこには片方の角が途中からへし折れ、牛面の額からどす黒く濁った液体がとめどなく溢れさせている牛鬼の姿があった。 「はぁーはぁーッ!」 凶悪な口元からどす黒い血液と一緒に荒い息を吐き出す。ぼたぼたと滴るそれが牛鬼の足元の砂に沁み込んでいく。 「ま、待ってくれ…………! 儂が悪かった…………」 脚の甲殻はひび割れ頭部と胴体のあちこちから黒い液体を垂れ流す牛鬼が呻く様に懇願する。目の前で弱弱しく首を垂れる巨大な怪物を見下す吸血鬼、彼女の眼はどこまでも冷酷な光を放っていた。 「随分とおめでたい頭をしているようですね。この私が、目の前で所長を傷つけようとした相手をこの程度で許すと――――本気で思っているんですか」
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