第1章

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その時、白い繭の外形に変化が生じた。楕円形をした等身大の繭の表面、そのいたるところがぼこぼこと泡立つように伸縮を繰り返す。まるで中から繭を突き破ろうとしている様に。 「無駄だと言っている。いくら牛が力強くとも山を動かすことが出来ない様に、貴様がどれだけ力に自信があろうと及ぶことは無い。貴様はそこで仲間が食われ啜られるのを黙って待っているがいい」 完全に無力化した吸血鬼に背を向け、残る杉谷と氷柱の前に立つ牛鬼。 「べつにあたし達が相手してあげてもいいんだけどさ――――――まだ、終わってないわよ?」 そう言って肩をすくめる氷柱が指さす先に。 ブチぃッ!! というくぐもった断裂音が白い繭の内側から聞こえてくる。 「いい事を聞かせて貰いましたからね。――――――要は、山を動かす事が出来ればいいんでしょう?」 ブチぶちブチぶちと、音が連続しその度に繭の内側から届くその音が大きさを増していく。 「………………は?」 虫籠に捕らえた虫が自力で脱出など出来るはずがないとでも言いたげに、表情の読み取りづらい牛の顔が明らかに動揺で歪む。そこへさらに追い打ちをかける様に、吸血鬼の腕が膜を突き破る様にして飛び出した。
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