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「はい、こちら天柳探偵事務所…………ああ、はいお久しぶりです乃里子さん。この前の廃工場の件はご迷惑をかけてしまい…………いえ、今回は所長のせいでは無く私の…………はい、ありがとうございます。では所長に代わりますね」
長い黒髪を後ろで結わえ、少女とも女性とも呼べそうな大人びた雰囲気を醸し出すのはこの事務所の秘書、兎楽璃亜。
その彼女から差し出された受話器を寝ぼけ眼で受けとったのが誰あろう天柳探偵事務所の所長、天柳相一である。
「あー電話代わりました、おはようございます乃里子さん」
『おはようじゃないだろう、今何時だと思ってるんだ』
「この気だるさは早朝のそれにそっくりだから8時ぐらいで」
『昼の12時だ馬鹿野郎。あと午前8時は早朝とは言わんし、気だるく感じるのは夏バテだ。暑いからといって冷房を効かせ過ぎずしっかり食事を摂ることである程度予防が可能なんだ、一つの組織の責任者として自己管理には気を使え』
「…………後でしっかり言って聞かせておきます」
『兎楽…………いつの間に」
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