第1章

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『かの有名な天柳家の一人息子が何言ってる』 この国で――――いや、この世界で天柳という名前が表すのは世界有数の大富豪である。どれぐらいの金持ちかというと…………相一の少年時代、バーベキューがしたいと言い出した息子のために南の島を一つ買い取ってみたり、魚釣りがしてみたいと言えば海川湖種類も問わず魚を集め琵琶湖の5分の1程の釣り堀を作ってみたりとその伝説は数え上げれば切りが無い。 相一が家を出て探偵事務所を開いたのも、そんな破天荒な親の元から離れたかったという事が理由の一つだったのかもしれない。 「今は殆ど連絡すらとって無いですよ。…………で、そのもう一つの共通点というのは?」 あまり触れられたくない話題なのか電話越しの安曇野に先を促す。 『これについては別に不自然では無いというか、共通点と言ってもいいものか分からんが…………。あーいや、そうだな…………そっちに関しては実際現地に行ってから確かめてくれるか』 「なんですかそれ、言葉を濁すなんて乃里子さんらしくない。というかここまでの話聞く限りじゃただ運の悪かったイケメンが溺れるっていう偶然が重なっただけの事故に聞こえるんですが」 『もう地元の観光協会には話を通してあるからな、話の続きはそこで聞くといい。…………ちなみに、これは警察からの正式な依頼という事になるので報酬は弾むぞ』 「分かりました。任せて下さい」 『最初からそう言えばよかったものを』
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