桜の木の下で

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あんなさんは、若菜さんだったんだ……。 その真実に泣きそうになってきた。 「あんなさんて、宮沢さんだったんだな」 泣きそうだったけど、嬉しくて可笑しくて、自然に話し掛けていた。 「翔君て、大石君だったんだね」 それににこっと笑う若菜さん。 「まさか宮沢さんだとは思わなかったよ。近くに住んでるってだけでも、びっくりだったのに」 「それは私もだよ。大石君だとは思っていなかったし、もっと遠い人かと思ってた」 お互い顔を見ながら笑う。 「でも何で、あんなって言う名前を?」 「あんなって、妹の名前なの。咄嗟に思い付く名前がこれしかなくて」 ……じゃあやっぱり1年生にいたあの子は、若菜さんの妹だったんだ。 「大石君も何で翔なの?」 「俺は名前の漢字から取ったんだ」 「あっ……。弘翔の翔(と)の漢字か」 下の名前で呼ばれたことが不意打ちとなり、思わずドキッとしてしまう。 緊張の糸が切れたのか。今度は若菜さんを目の前にしていることに照れてきた。 どうしたらいいか、分からなくなる。
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