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「……あの」
そこに若菜さんが静かに呟く。
「この場所にあんなを呼んだ理由って、何?」
その一言に、張り詰めたような緊張が舞い戻ってきた。
……そうだよ。俺はここにあんなさんを呼んで、伝えたかったことがあったんだ。
あんなさんのことが――。
いざその時を眼の前にして、鼓動が激しく動き出す。
こんなに大きかったら、若菜さんに聞こえてるんじゃないかな……?
「俺が……。あんなさんを呼んだ理由は……」
結果として、あんなさんは若菜さんだった。
でも伝えたかったことに、変わりはない。
……やべぇ。緊張で言葉が出てこない。
何か喋ろうにも、震えて口が開くだけ。
俺のヘタレスキルが、また発動してるよ……!
情けなく思っていると、若菜さんはにこりと微笑んだ。
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