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教室の隅。
窓の外に舞うのは、夏の残骸。
刹那で、冷たく、短い命―――パリパリに乾いた木葉。
「まぁた、寝てんの」
無造作にはねた髪の毛に少しだけ触れ、彼女はすぐに手を放した。
机に突っ伏したその後ろ姿は、高校の頃から全く変わらない。彼は昔からそうだ。外の世界によほど興味がないのか、目を離せば引きこもりになってしまいそうなほど脱力した性格。
ぴくん、と反応した肩がゆっくりと起き上がる。
両腕が伸び、背中がそることで顔が露わに――――は、ならない。いつの間にか伸びてしまった前髪で顔の半分以上は隠れれてしまっているのだ。
「あぁ、すみた…」
「あぁ、澄田。じゃないよー!次の講義始まる!そんなに寝てばっかいたら、今期こそ単位落とすよ」
バン
三崎真央の隣で机が重い音を立てる。
彼は一瞬驚いて目を見開いたが、うんざりしたようにため息をついた。
「単位を出す出さないを決めるのは、澄田じゃなくて教授だろ」
「だ、か、ら!落とされるよって言ってるんでしょ」
「あの教授は学生のことなんか見て講義してないから平気」
「もー…」
その光景はもはやおなじみ。ほぼ毎日繰り返されるやり取りだ。
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