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「いらっしゃいませ………ご新規様、かな?」
出迎えたのは、長めの黒髪を後ろで束ね、フレームのない眼鏡を掛けた青年。
戸惑いながらも小さく頷くと、彼は胸ポケットからペンを一本取り出し、下駄箱であっただろう棚の上に置かれた紙の上に置いた。
ハンドルネーム、生年月日を記入する欄があり、他は真っ白。
硬質なカードが貼り付けられていて、そこにもハンドルネームを書く欄が設けられている。
「ハンドルネームは何でも構わないよ。呼びやすい名前の方がいいかなぁ…あ、生年月日は正しく書いてくれるかな?未成年飲酒を防止するためにも、ご協力お願いします。」
にっこりと優しい笑みを浮かべ、一応ね、と付け加える彼。
ハンドルネームには少し迷ったが、苗字をカタカナで書いておいた。カードにも同じようにすると、それが会員証だ、と説明される。
「会員証、て言っても僕が名前を覚えるためだから、顔パスの人も結構いるけどね。もうここに用はないと思えば捨てて帰っても構わない」
あはは、と快活な笑いが部屋の奥へと響き、明るい部屋からひょっこり女性の顔が覗いた。
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