18人が本棚に入れています
本棚に追加
その内、窓際にあるソファに座る男性に向かって彼女は声をかけた。
「ショウさーん、お隣よろしく。ご新規さんだから何かあれば教えてあげて!」
「いいけどヨウちゃん、それは君の仕事じゃないの?」
「私、買い出し頼まれてるの」
「そう。気を付けていってらっしゃい」
「ありがとう。いってきます」
席まで案内すると「任務完了」と言わんばかりに見向きもしないヨウちゃん。
あっさりと背を向け暗がりの方へと消えていった彼女は、三日月形の唇がとても印象的な女性だった。
あまりのあっ気なさに呆けていると、向かいの青年から名前を問われる。
「あっ」と声を漏らし、彼女に言われた通り初めに決めたハンドルネームを告げると青年はにこやかに握手を求めた。
「これも何かの縁だ」
よろしく、とこちらも手を握り返す。
ショウ、と名乗ったその人。
ごつごつとしていて、たくさんの苦労を乗り越えてきた、皮の硬い職人のようなそんな手だった。
最初のコメントを投稿しよう!