ご新規様

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その内、窓際にあるソファに座る男性に向かって彼女は声をかけた。 「ショウさーん、お隣よろしく。ご新規さんだから何かあれば教えてあげて!」 「いいけどヨウちゃん、それは君の仕事じゃないの?」 「私、買い出し頼まれてるの」 「そう。気を付けていってらっしゃい」 「ありがとう。いってきます」 席まで案内すると「任務完了」と言わんばかりに見向きもしないヨウちゃん。 あっさりと背を向け暗がりの方へと消えていった彼女は、三日月形の唇がとても印象的な女性だった。 あまりのあっ気なさに呆けていると、向かいの青年から名前を問われる。 「あっ」と声を漏らし、彼女に言われた通り初めに決めたハンドルネームを告げると青年はにこやかに握手を求めた。 「これも何かの縁だ」 よろしく、とこちらも手を握り返す。 ショウ、と名乗ったその人。 ごつごつとしていて、たくさんの苦労を乗り越えてきた、皮の硬い職人のようなそんな手だった。
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