3.祭の朝

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誰にでも、世界から拒絶されたような孤独感を味わうことはあるだろう。 自分が何者なのか、どうあるべきなのかを自問自答することもあるかと思う。 その時、ものを見る目がどう働くか。 それでその人の人生が決まると言ってもいい。 ぐらつく人は簡単に折れる。 芯のある人は広く世界をとらえることができる。 ウタさんが匿って保護しているはぐらついて折れてしまいそうな、弱った生き物たちなのだ。 「君たちもいつかは、ここを離れていかなきゃいけない」 ウタさんは、そう言う。 「でなきゃ、いつかは食われてしまう気がして怖いよ」 目に見えないけど怖い存在【お化け】に、イベント【ghost】に、消えてしまった【食われてしまった人】に。 客たちは沢山の言葉を創ってきた。SHOUTという店で、自分たちの城を築き上げてきた。この店は、そうして成り立ってきた。 人は店に依存し、店は人に依存し。 それでは強くなれないということの象徴が裕美であり、ハヤトであり、リュウである、とウタさんは危惧しているというのだ。 ウタさん、と、彼女は声を落とす。 「私は時間がかかっても強くなってるって思ってるよ」
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