織田 信定……

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´ 「ふんっ、捕まれば情け無い面をしとるもんだがや」  そう言った信定は、馬上から降りて間者の処に歩み寄り、屈み込んだのでした。 「お前のお陰でにゃ、儂(わし)に仕える三人の若武者が死んだがやっ!」  と、荒い口調で鉄扇を激しく撃ち、 間者の怯む表情には、頭から吹き出た血が流れ落ちました。 「お前は何処の臣下(しんか)だがや?  君主の名を聞こうかっ」  押し黙る間者に、信定は更に鉄扇で撃ちまくるのでした。 「はぁ…はぁ……」  間者は血だらけになりながら、全身を痙攣(けいれん)させて仰向けに倒れました。 「ふんっ、しぶとさだけは誉めてやるが。 けどな、我が家臣の無念はまだまだ晴らせんがや!」  信定は、壱番槍の権助に逃げぬようとに両足の腱を切断させ、 更に丸裸にして内臓が露出せぬくらいまで腹を十文字に割(さ)かせました。 「間者、あの遠吠えが聞こえるぎゃぁ? 儂らは、京の都を離れて国許へ還るぎゃ。 このような腐った都は要らんが。 儂ら織田一族がやがては天下を握って、活気に栄える都を造って見せるがや!」  周りを見回すと、血の臭いに誘われて、蠅と野犬が集(たか)り始めるのでした。 信定は騎乗すると、手綱を引いて帰路の東から北へと向かわせ、 多勢の家臣達もそれに従って進むのでした。  陽は大きく傾き、伸びた影は織田の軍勢を忙しく映し出しました。  口を塞がれ動けぬ身体にされた間者に、 野犬がじわじわと迫って来ては、臭いを嗅いで傷口を舐め始めるのでした。 ´
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