24人が本棚に入れています
本棚に追加
´
信定の二千の家臣らは、鴨川の五条大橋の河岸を中心に陣営を構えました。
「交替で見張りを立てよ! 篝火(かがりび)を絶やすな!」
家臣らは持参した米や味噌やらで、鴨川の水を汲み調理を始め、
「お屋形様、お召し上がり下され」
酒も振る舞われたのでした。
信定は、重臣らと酒肴を交えました。
「信定様、諸々の大名らは国許に戻り、地固めに昂じておりましょうぞ」
「これからは、戦の在り方も尚も尚も一考せねばなりますまい」
「城も、山城へと移すべきでござろう」
「近隣の国と、如何様に接するのが肝要かと心得る」
いつものように、信定は頷きながら聞いていたのでしたが、
「誰か! 壱番槍の権助をここへ連れて来いや!」
と叫び、程なくして権助はやって来ました。
「お屋形様、お呼びでござりましょうか?」
権助は片膝をついて、しっかりと信定を見てそう言いました。
「うん、酒宴のところを呼び立てて悪かったぎゃ。
おみゃぁ(お前)もこれからは此処で飲み交わせや」
「はっ! 有り難きお言葉。
では、かような者でもよろしいのかと……ご重臣ご一同」
重臣らは顔を見合わせると、権助に盃を差し向けました。
権助はそれを丁重に受取り、信定より注がれた酒を飲み干しました。
「うん、権助、おみゃぁの意見聞きてえがよ」
「はっ、何なりと」
「うん、これからこのやまとの国は、長い戦になるぎゃ。
そこでじゃ、ここは何を如何したら……ち言う論じ合いの場ぎゃ」
信定は権助に注ぎました。
「はっ!」
「遠慮はいらん、何でも申すがええ」
「はっ、では……
先ほどの間者から聞いた話しではこざりまするが」
みんなの盃を持つ手が止まりました。
´
最初のコメントを投稿しよう!