織田 信定……

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´  今度は信定が立ち上がり、大刀に手を掛けました。 「その化け物、儂が成敗してくれるがや!」 「お屋形様、その化け物、潰れた眼の方に火傷をしておりまして、 それはそれはおぞましく醜いのでございます」 「見て来たがや!?」 「間者より聞いてのこと」  信定は大刀を仕舞うと、 「まだ話が見えんだでよ。その化け物がどうしたがや?」 と訊いて、重臣達もうんざり顔になりました。 「ここ数年不作が続いて、餓死者も出ておりますが、 そこの集落ではその様なことは無く、 田の稲穂が豊穣(ほうじょう)の海にございます。 稲穂や野菜だけではござりませぬ。無花果、柿、蜜柑などと、 木に実るあらゆる物がたわわに熟れてございます」 「見て来たのか!?」 「聞いてにございます」 「……なら、その化け物が全てに関与していると?」 「はっ、お屋形様のお察しの通りにてございます」 「その化け物を生け捕りにして、我が家臣に取り立てるぎゃ」 「それは出来ませぬ」 「すでに何処かの配下に……」 「違います。何処かの家臣の者でもござりませぬ。 独立国にてございます。 故に、何処の国とも関わりありませぬ」 「生意気な百姓ぎゃ! その様な百姓、儂が攻めて懲らしめるぎゃ!」  と言って、また大刀に手を掛けるのでした。 「お屋形様、それは出来ませぬ」 「何故ぎゃ? 頑丈な城壁でも在るがや!」 「その様な癖は在りませぬ」 「見て来たがや?」 「聞いてにござります」 「おみゃぁ(お前)の話しは……… ではどうしろと言うだでよ?」 ´
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