第1章 北の物の怪たち

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 宿を飛び出したロビンたちは、改めて村の惨状を目の当たりにした。  あちこちに倒れた村人たちが苦しそうに呻き声を漏らす。  もちろん、そのすべては『男性』の村人だ。  女たちは一人残らず、猿人どもに連れ去られたのだろう。 (妙ですね・・・)  周囲を見回していたロビンの意識に、不安そうに呟くゲリの声が響いた。 (妙って何が?) (村の中の人の気配が少なすぎるのです。) (・・・女の人が全員連れ去られたからだろ?)  ロビンは自分の言葉に、改めて事の重大さを感じ、焦りを覚えた。 (いいえ・・・それでは説明がつきません。村に残った人間の数があまりにも少ない・・・ロビン・・・あのアヴァターラたち・・・元はここの村人たちだと考えて間違いありません。)  ゲリが気付いた事実は、猿人たちとの決戦に赴くロビンたちの覚悟に水を差す形になった。 「じゃあ・・・ヤツらを単に殺すことはできないってことか?!」  ロビンが苛立ちを吐き出すように叫んだ。  ゲリの声はロアとマゴロクにも届いている。  しかし、ゲリの言葉を聞いたロアもマゴロクも、眉ひとつ動かさなかった。  そして、ロアはロビンの方に向き直ると、その顔を見据えて言い放った。 「ロビン・・・今はそんなこと気にしている場合じゃねえだろ!」 「だって・・・」  言い返そうとするロビンのセリフを遮って、今度はロアが叫んだ。 「ここの村人とメイフェル、どっちが大事なんだ!?」  叱りつけるようなロアの声にロビンは言葉を詰まらせた。  そんなロビンに、ロアは優しく教え諭すように次のセリフを続ける。 「大事なものを守るってことはな・・・時には何かを犠牲にしなきゃいけねえもんなんだ。全部を守ろうなんて、誰にもできることじゃねえ。だから、自分の大切な人だけは守らなきゃいけねえんだ。その覚悟を決めたから、軍に入ったんだろ?・・・なら、ここでジタバタせずに、メイフェルのことだけ考えるんだ。」    ロアの言葉にロビンは納得せざるを得なかった。 「うん・・・ロアの言うとおりだ。」 「よし、わかったなら、先を急ぐぜ。」  そう言うがいなや、ロアはすぐさまディアブロへと姿を変えた。
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