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「だって・・・窓辺だし」
「雪で見えないよ」
「立ってするのは・・・」
「この前、お店でしたろう? 上手だったよ」
既に興奮しているアキの前を撫で上げれば、ただそれだけで全身をビクつかせる。
「好きみたいだね。こういうの」
「やだっ。今日の正司さんなんか違うっ」
「じゃあ、やめるかい? 」
「やめない。・・・正司さんが好きだから・・・やめない」
「アキ」
「して・・・正司さん」
ガラス窓についてる手を離させ、冷えた手の平を自分の頬にあてた。後ろから抱きしめて、もう片方の手を前に回し途中になって淋しがっていたものを愛してやる。
「あっ・・・あん・・・ん」
「ごめんよアキ、君があんまり雪に夢中だったから雪に嫉妬したんだ」
「・・・なぁ・・・んだ」
「・・・・・・・」
謝罪のキスをする。でもアキのは誘惑のキスだった。
「続きはベッドで」
「うんん。ここでいい」
「アキ」
「して、正司さん」
アキがバスローブの裾をギリギリまで持ち上げてみせ、そしてゆっくりと前かがみになってゆく。
「アキ」
年甲斐もなく興奮した。
思えば何度も繋がったまま果てていた。
「ごめんよ。アキ。バスルームに」
「正司さん絶倫。おれ溶けそう」
大丈夫。一人で行けるから。とアキはバスルームへと消えた。
窓の外を見れば、まだ季節はずれの雪が降っている。
アキの温もりが恋しくて嬉しくて。欲求以上のなにかを求めてしまっていた。
ふと雪だるまに刺さったさくらの花を思い出した。
アキは僕の春?
いつもそばにいて、控えめに微笑んでくれるあの存在は、あの温もりは。
まぎれもなく。僕が人生で待ち望んでいたもの。
春の雪が僕に教えてくれたもの――
それは――
僕は待ちきれず、バスルームへと急いだ。
おわり
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