第1章

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「もしかして心配してた? やだなぁ。かじかんでただけだよ。あったまれば復活。雪山じゃないんだから」 「そう・・・」 「なんか。やっぱり元気ないね」 「そんなことないよ」 「そんなことあるっ。隠してる。・・・いいたくないならいいけど」 「雪のせい・・・かな」 「正司さん寒いの平気じゃん。今日もそんな薄着で」 「アキは雪の降る音を聞いたことがあるかい? 」 「音? なんてするの? 」 「広い草原とか、早朝とか、まだ誰も動いてない時間帯に一人でいるとね、聞こえて来るんだよ」 「どんな音? 」 「それが。言葉にしがたくて」 「そんなぁ」 「ごめん、アキ。でも音がするんだよって話をしたかったんだ」 「・・・それって逆なんじゃない? 」 「うちの方でもたまに雪は降ったけどさ。やっぱりそのときはいつもと違う朝方なワケ」 「うん」 アキが正司の胸に手を滑らす。 「で、庭に出てみると無音なのね。雪に音が吸収されてシーンとしてるの。でも何かが聞こえるの。でもそれは自分の体内の音」 「体内の音? 」 正司の首筋を撫でながらアキは続ける。 「血液の流れる音。鼓動の音。呼吸の音」 「・・・・・・」 アキのキスは優しかった。 僕は今日始めて自分の体に血が巡った気がした。 「ねぇ、正司さん」 「ん? 」 「こんなに誘ってるのに・・・まだだめ? 俺は雪に負けちゃうの?」 「お馬鹿さん。すぐ家に帰るよ。シートベルトして」 僕は恋人の手を握り、十分温まったのを確認してヒーターを調節し身支度を整える。もちろん恋人の手の甲にキスするのは忘れない。 ベッドで待つシャワー音。 ふと気になって窓辺まで寄ってカーテンを開けてみたら、また雪が降ってきていた。 ふわふわ。ふわふわ。 自分の地元とは違う雪。 「お待たせ。正司さん。あれ、また降ってきた? 」 「ああ。そうみたいだね。キレイだよ」 高層階から雪が舞う風景は確かに美しかった。 「わぁ。ボタン雪~」 アキのバスローブの下から太ももをゆっくりと撫で上げる。 「あっ」 柔らかな感触を楽しむように揉んでその先の丸みへと手を進める。つるりとしたそこは小ぶりで形が良くとても気に入っていた。 「正司さん? 」 「なんだい? 」 「ここ・・・で? 」 「なにか・・・問題でも?」
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