第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
<無題> 俺は、今日も同じ時間に同じ音で目を覚ました。 片瀬江ノ島駅に到着する電車はそのままUターンする。 布団を出て、TシャツとGパンに着替えると、カバンを背負いスニーカーを履く。 昨日も編集長からNGが出た。 お前の書きたい絵なんてどうでもいいって何度いったらわかる? 俺が要求してるのは、読者が求める絵なんだよ。 そんな事は分かってる。 いつも納品されるのは1%の俺と、99%の他人だ。 誰だっけ、転んでも起き続ければ不様が生き様に変わるって言ったのは。 起きても起きても俺は不様なままだ。 いつもより家を早く家を出て、砂浜にたどり着く。 最近ようやく見慣れた江ノ島がそこにある。 俺は昔の江ノ島が好きだった。 朽ちた様な灯台の江ノ島が。 今はLEDで華やかになった江ノ島には不釣り合いな灯台がある。 読者が求める絵か。 いつも同じ時間の電車で それを探しに今日も会社へ行く。 <了>
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加