ひねくれた笑顔

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名前を呼んでから、日向の顔を見る。 「数日後には夏休みに入る。だから日向は、その前に明仁の居場所を新宿のどこなのかをできるだけ特定してくれ。些細な情報でも構わない。俺は……」 言いかけて拳を握る。 「以前、病院に入院していた時、二ノ宮から誘われていた別荘に行くつもりだ。そこで明仁に会うことができるかもしれない。でも、それは明仁を助け出す最後のチャンスになると思う。だからその前に、奴らの情報を江尻とともにかき集め、二ノ宮の企みもまとめて潰す算段をつけておこうと思う」 「潰す算段って……明仁君を助け出すことだって難しいのに、オレたちだけで二ノ宮君たちの企みまで潰すなんてことできるんですか?」 日向は俺の考えに心底驚いた様子で、目の前のテーブルに手をついて身を乗り出した。 「〝俺たちだけ〟じゃない。あてはある」 日向はその言葉に疑問を抱いたらしく、首を傾げた。 俺はその様子を横目で見ながら、すでに冷え切ったカップを手に取り、茶色い液体を啜る。 なんだか疲れたな。 俺はもう一度だけ目を閉じる。 早く、あのバカな明仁に会いたいな。 会ったら一発殴ってやる。 そしたらきっと言うんだろうな。 「ふざけんな、痛てぇだろうが、バカ!」って。 そう言いながらきっと、ひねくれた笑顔を俺に向けるんだろうな。 目の裏に浮かぶ明仁の顔を眺める。 そのうち、なんだかとても眠くなって、体から力が抜けていく。 あれだけ怖かった暗い闇が、今だけはまるでふかふかの柔らかなベッドのように、俺をゆっくりと包み込んでいった。                         ―――――――上巻(完)
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